前回に引き続き「自己紹介」の重要性をお話しします。
前回は主に「起業動機(あなたはなぜ起業するのですか)」について的確な説明が必要であることをお話ししましたが、今回は「事業テーマ」についてです。
あなたが取り組む事業テーマをどれだけ的確に説明できるかが、起業自体の成功に大きな影響を及ぼします。さっそく事例を交えて解説します。
事業テーマをどのようにひとに伝えるかを明らかにする前に、次の問題を考えてみて下さい。
【問題】
ここにバットとボールがあります。
ふたつ合わせて¥1,100でした。
バットはボールよりも¥1,000高いとなると
ボールの値段はいくらでしょうか
ちょっと時間をかけて考えてみて下さい。
どうですか?分かりましたか?
世界中で行われているこの問題を解いてもらうという実験では、大多数の被験者が「¥100」だと答えるという結果が出ています。
※英語圏ではもちろん$ですが
http://www.businessinsider.com/question-that-harvard-students-get-wrong-2012-12)
当然、みなさんも¥100が頭に浮かんだと思います。
書籍「ビジネスモデル症候群」でも紹介したこの問題、実は答えは「¥50」です。
バットが¥1,050。ボールが¥50。合計すると¥1,100。
つまり、こんな簡単な問題を、世界中のひとたちが間違えてしまうのです。
ではもうひとつ、別の事例をみてみましょう。
私は起業の相談に来られる方にはいつも同じ質問をします。
「取り組みたい事業テーマについて教えて下さい」
これはいつも同じです。
では、次の事例をみて、私の質問に対する回答として正しいかを評価してください。
「私は就職、転職時における『ミスマッチ』の解決に取り組んでいます。ひとは、収入や労働条件などで自分に適した就職先を判断しようとしますが、実際には会社の社風や人事評価制度などが自分にマッチしているかどうかが重要です。そこで私は、一般的には掲載されないこれらの情報を提供する求人サイトを展開し、ひとりでも多くのミスマッチ被害者を救済できればと考えています。情報の収集は実際になかで働くひとや退職したひとからの口コミとヒアリングで行い、レーダーチャートして表示します。口コミの数が蓄積されるたびに、チャートは更新されていきます。無料登録のユーザは月に3社の情報が閲覧できますが、有料登録すれば無制限で閲覧可能です。また、採用企業側の人事担当者向けにも有料で情報を公開し、自社と他社の評価がいつでも確認できるようにします。また、転職エージェントにも有償で情報提供します。創業当初はデータの蓄積が少ないため、対面での転職支援も事業展開していきますが、3ー5年を目処に、オンライン上での情報提供に事業の軸足は移していきたいと思っています」
一瞬、よくまとまっている回答のようにも感じますが、私の質問に対する答えとしては、あまり評価はできません。なぜなら、私が尋ねたのは「事業テーマを解説して下さい」とお願いしているのですが、この方の回答のほとんどは自分のビジネス案です。
プレゼンの場では「課題」を定義して話ししろ、というのは、起業に関わっている方にとっては常識だと思うのですが
(詳しくはこのページなどをご覧下さい:http://500hats.typepad.com/500blogs/2009/08/your-solution-is-not-my-problem.html
問題はなぜこうしたすれ違いが起こるのか?ということです。
先ほどの「バットとボール」の問題、そして「事業テーマについて教えて下さい」に対する回答には、共通する原因があります。
それは、
「問われていることを正しく解釈しないうちに、答えを出そうとする」
ことです。
自己紹介をするときに起業家が事業テーマを問われて失敗するのは、典型的にこのパターンです。
では、最後にもう一問考えてみて下さい。
現在の日本では毎日のように各種メディアで人口減少が大きな問題として取り上げられていますが、地域社会において「人口減少」は解決すべき「課題」なのでしょうか? また、人口減少を解消するために、税金を投じて移住促進に取り組むのは解決策として正しいのでしょうか?
今回はあえて正解は示しませんが、自分なりの意見を考えてみてください。
起業家として成功するかどうかは、こうした問いに「的確な課題設定」が出来るかが大きく影響します。
次回からは、成功するための課題設定が出来るようになるにはどうしたら良いかを考えていきます。
「誰でも出来ること」を「誰もやらないぐらい」やる。
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