「ビジネスモデル症候群」とは
世の中には誤ったダイエット法が数多く存在し、短期的に不健康に痩せてはリバウンドを繰り返すひとが多数います。一時的に体重や体型に変化が現れるのであたかも効果があるように感じますが、食事や運動の習慣はもとのままなので、ダイエットが終わると、以前よりも太りやすい体質になったりするのです。起業も同様に、起業初心者に向けて誤った起業方法が数多く紹介されています。経営の経験がない、初めて起業において、無謀なダイエットに似た起業術を進めることで、失敗の取り返しがつかなくなるような事例が後を絶ちません。弊社ではこうした誤った情報のことを総称して「ビジネスモデル症候群」と呼んでいます。
ビジネスモデルがあるから失敗する
時代が変わっても、ベンチャーが事業の立ち上げに最も陥るのは、自分のアイディアに対する過度な「思い込み」です。リーン・スタートアップは、まさにこの思い込みから逃れるために「アイディアは単なる仮説に過ぎない」という考えを取り入れたのですが、残念ながら一度持ってしまったアイディアは、そう簡単には修正できません。自分の意思を固めて「イケる」と信じたアイディアを、仮説検証と称して「自ら」修正できるひとは、むしろ特殊な能力の持ち主なのです。これは、決して仮説検証の手法に問題があるわけではありません。たとえ事業開発の経験があるひとでも、アイディアへの「傾倒」が強くなることによって誰にでも起こりえる、心理学の影響です。つまり、ビジネスモデルというアイディアを持ったひとほど、この状態に陥りやすくなるということなのです。
目の前を成功が通過していく
どんなに自信のあるアイディアがあったとしても、自分はそんなに盲目的にはならないと自信を持っているひともいるでしょう。そうでないひとも、ぜひこの動画をいちどご覧下さい。最初に現れる英語は「白チームのパス回数を数えなさい("Count how many times the players wearing white pass the ball")」という指示です。
いかがでしたか?
心理学の実験にて、最初に指示されるミッションの元でこの動画を観た約半数のひとが、途中で登場する動物の姿を目にすることが出来なかったそうです。これは「確証バイアス」という症状で、心理学の世界で証明されている、一種の錯覚状態を言います。ひとは何かに集中すると、実際の視野にまで影響が及ぶことを証明した、とても有名な事例です。実は、自分で思いついた「自信があるアイディア」を仮説検証している状態とは、白チームのパス回数を数えるというミッションを持ちながらこの動画を観ているのと同じ心理状態に陥り、パスをしている姿以外は本当に目に映らなくなってしまうのです。こうして、より有力なフィードバックが仮説検証を通じて返ってきているにも関わらず、確証バイアスに陥った本人たちは、そのフィードバックを無視したり、本当に気づかなかったりするのです。これが「自信があるアイディアをもって起業する」時に起こる、心理的な錯覚なのです。
※動画を観て動物が見えたからと言って「バイアスがかからないひと」なのではありません。ミッションへの集中が少なかっただけです。本番の起業では、アイディアに自信があるほど「誰も」が見えなくなりますから注意しましょう!
ビジネスモデル症候群には予防策がある
アイディアがなければ起業する自信がなく、アイディアがあるとビジネスモデル症候群になる…。ではどうしたらよいのでしょうか。でも安心して下さい。ビジネスモデル症候群には効果が確認された有効な対策があります。思い込みに陥ることを前提に、予め、対策を講じておけば良いのです。
ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?
プレスキット
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