起業科学・ベンチャー科学とは

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スポーツはもうとっくに「科学」

「起業科学」とは、科学を事業テーマにして起業することではなく、起業というプロセスを「科学的」にアプローチしようという考え方です。これを私は「起業科学」と呼んでいます。
科学的なアプローチを考えるきっかけとなったのは「スポーツ科学」という学問分野です。東京にある「国立スポーツ科学センター」という研究所では、日々、多くの科学者がアスリート育成の研究に従事し、生理学、心理学、栄養学といった学問の観点から、将来、世界で通用するアスリートを育成するための研究が、科学的に行われているのです。スポーツの世界では、もうすでに、先輩アスリートによる「経験と勘」に基づいた指導というオールドスタイルから脱却し、再現性があり、そして誰もが学ぶことができる学問へと進化しているのです。
これに比べ、起業という世界はいまだ前世紀のアプローチが横行する黎明期を脱していません。これは、ひとえに、指導・支援側が事業の成果を焦りすぎるために、起業というメカニズムについて十分な研究を行わないことに起因します。試合を戦うアスリートの身体にどのような負荷がかかるのかを研究し、それを克服するためのトレーニング理論や栄養学が確立するスポーツの世界からは、遙かに立ち後れた分野です。起業においてまず必要なのは、そのメカニズムを解明する研修が先で、その解明されたメカニズムに従って、実際の起業家育成・支援が行われることで、現在よりも多くの成果が得られることは分かっています。日本の起業科学の立ち後れは、多くの起業家を犠牲にしているだけでなく、長期的な視野において日本経済にとっても多大なる損失なのです。

「発掘・選別」から「育成」へ

起業を支援する側の研究の遅れを象徴するのが「ビジネスモデルコンテスト」です。起業の登竜門的存在であるこうしたイベントは、かつて、日本が起業に対するとても高いハードル(株式会社の最低資本金が1000万円など)が存在していた時代には、特定の役割を果たしていました。能力がありながらも資金面がネックになっている優秀な人材を「発掘」することには、起業家本人のみならず、日本の経済界にとっても大いに意義のあることでした。
しかし時代は変わり、創業時の資本金制限はなくなり、起業のための初期投資額が大幅にコストダウンした現在においては、コンテストは起業の登竜門ではありません。実は、こうした違いが曖昧になっている支援環境こそ、多くの起業家をビジネスモデル症候群に陥れる原因なのです。