“Lean Startup Japan”ブログの更新は実に7ヶ月ぶりになります^^;

ご愛読頂いておりましたみなさま、大変申し訳ありません!
昨年ぐらいから更新頻度が減ってしまっていたのですが、今年は久しぶりに投稿欲に燃えております(笑)というのも、みなさまにお伝えしたいことがようやく整理でき、書きたいことが圧倒的に増えたのです!

2015年を迎えた現在、リーンスタートアップ自体の存在や考え方はすでに広く普及した反面、新たにリーンに取り組んでもなかなか効果が実感できなかったり、頓挫する事例も見聞きするようになりました。

2012年の日本語版書籍出版や関連記事の増加に伴い、実は、リーンスタートアップによってもたらされた成功事例よりも、導入に失敗するケースや効果を実感できずに暗礁に乗り上げるケースの方が格段に増えているように感じます。せっかくリーンの必要性に気づいたにも関わらず、むしろムダな時間を費やしてしまうという結果を招いたのです。

こうした状況を何とかしたいと2012年以降、私なりに取り組んできたのですが、どれだけ理論を整理して提供しても、成功まで至る確率が向上することはありませんでした。リーンとは、理解することは容易であるにも関わらず、実践はいかに困難であるかを私自身が痛感する日々だったのです。

このような状況を打開するには、理論の整理を推し進めることよりも、まずはより多くの実例に触れ、その中から原因と考えられる仮説を設定していった方が答えにたどり着きやすくなります。そこで、一昨年の後半からはセミナーや勉強会の開催回数を抑えつつ、実際の現場に触れるコンサルティングの機会を格段に増やして、事例の収集に努めました。

コンサルティングを通じて検証したのは「どうすれば新規事業は成功するのか?」ではありません。「リーンスタートアップに取り組むことを決意した組織」が「どのような困難に直面」し、「それをどう乗り越えるか、または乗り越えられないか」を私自身が仮説検証を行い、そして乗り越えられる事例のパターン認識と、乗り越えられない原因を識別するというものです。事業自体の成功事例を追いかけても、リーンへの取組みとの依存関係がない事例に惑わされる場合がありますので、あくまでリーンスタートアップへの取組み事例を重ねることに注力したのです。

その結果、この取組みは、事前の予想を遙かに超えた結果をもたらしました。
もちろん例外はあるものの、高い確率でリーンへの取組みが成功するか失敗するかを事前に予測できるまでに至ったのです。

当初、リーンへの取組みの成否は、それ以前の企業文化や、取り組む新規事業の内容によって左右されるのではないか?との仮説を立てていたのですが、実は、成否を分かつものは非常に単純なことでした。

それは、リーンスタートアップのような「新しいプロセスの導入」だけに責任を持つ担当者が存在しているか否か、という違いだったのです。

新規事業の立ち上げの際に、事業そのものを設計する人とは別に、新しいやり方の設計だけに専念する担当者を設置すると言うことは、一見するとそれほどリーンの成否に影響しないように感じるでしょう。しかし実態は、新たな事業の開発と、新たな事業開発プロセスの設計はまったく異なる作業であり、この作業を明確に分離できたかどうかで、後の結果は大きく変わったのです。

この2つの作業の担当者が別になると、新規事業そのものが期待通りに成長しているか?という測定と、新しいプロセスは企業の投資効率を向上させたのか?という判定は明確に分離されるようになります。新規事業開発担当者は、事業仮説検証からの学びを測定することによる進捗を測定し、プロセス設計担当者は、企業の投資効率が改善されているか?という測定をすることで、両者の取組みがそれぞれ正確に判断できるのです。

企業がリーンの導入に失敗する理由のナンバーワンは、新たなプロセスへの取組みを、新規事業の立ち上がりで評価しようとする間違いから始まります。新しいやり方(手段)を講じた結果として、新規事業(目的)が実現しているかを測定しようとすることは、一見すると正しいように感じます。しかし、手段の成功と目的の成功を混同して判断することこそが、大きな間違いなのです。

リーンへの取組みに失敗するパターンでは、多くの企業がリーンスタートアップっぽいこと(例えばキャンバスを書いてインタビューして・・・など)をやってみては、そこから何も事業アイディアが進展せずに頓挫し、「仮説検証していても何も進まない!手っ取り早く作ってしまおう!」とリーン化を投げ出します(笑)みなさんの周りにも同じような事態を迎えたひとが少なからずいるのではないでしょうか。

成功する現場では、リーンスタートアップの導入はこれとは全く異なるやり方をしています。

例えば、ある部門の承認プロセスに煩雑性の問題があるとしたら、リーン化を進めることでどれだけ承認プロセスが改善し、投資効率が向上したかについて測定をするのが、本当のリーンスタートアップの導入および測定です。
いままで「PlanA」以外にピボットする選択肢を持たずに事業開発して失敗を繰り返してきた組織であれば、いかにPlanB以降のオプションを用意することができるようになったかによって、リーンスタートアップの導入効果は判断できます。

こうしたプロセス改善が確実に定着しさえすれば、その組織は以降の新規事業開発において最も投資効率の良い文化・習慣を得ることができ、結果としていつかは必ず事業開発に成功することを確信するようになるのです。

新たなプロセス設計責任者がそれに専念するか、それとも事業開発と兼任するかということ自体は問題ではありません。明確なのは、プロセスの評価を事業の伸展で評価しないことを徹底されているか、ということです。プロセス効果とは最初の1事例目で現れるとは限りませんので、複数の事業開発を横断して観察し、投資効率が向上しているかだけに着目しているのです。投資効率が向上すれば、他社よりもより高い確率で新規事業に成功する企業体質になれる、という関係性を正確に理解していらっしゃるのです。

私はこのような立場の方々を「リーン・ファシリテーター」と名付けました。どこかで見聞きした「リーンっぽいこと」をやるのではなく、組織の投資効率向上に対して責任を負い、ありとあらゆる手段を講じてそのプロセスを独自に構築し、実際に事業開発を担当する方の少ないリソースを最大限に活用できるよう、継続した支援をしていくのです。また、ファシリテーターは新規事業開発担当者だけでなく、新規事業に投資を決断する経営陣の投資効率の最大化を両立させることによって、企業のリーン化を最も推進することが出来るのです。

このたった一つの事実に気づくと、トヨタ生産方式を設計された大野耐一氏も、まさにプロセス設計に責任を負った「リーン・ファシリテーター」であったと言えます。トヨタという会社は、多品種少量生産プロセスの確立という、かつで誰もなし得なかった非常識な投資スタイルの確立を目指している際に、カローラの販売台数で新たなプロセスを評価することはありませんでした。これによってトヨタ生産方式は永続的にブラッシュアップすることが可能になり、後に大きな利益をもたらすことができたのです。

繰り返しますが、リーンスタートアップの実践とは、キャンバスを書いたりインタビューしたりすることではありません。企業やスタートアップの、限られた資源を最も効率よく投資する仕組みを構築するための包括的な取組みのことなのです。

今年の“Lean Startup Japan”は、このリーン・ファシリテーターの育成に取り組んでいきます。
オープンセミナーの開催やファシリテーターの派遣などを通じて、「本当のリーンスタートアップ」を実践できる企業を1社でも増やしたいと思っています。セミナーや研修の詳細は本年度内にはご紹介できるよう準備を進めておりますので、ぜひご期待頂ければと思います。

実はリーン・ファシリテーターという立場による効果の実証には、実在の人物が複数いらっしゃいます。ご本人の承諾により順次紹介させて頂きますので、こちらも合わせてご期待ください。

もし、リーンプロセスの確立やファシリテーター育成で春まで待てない!というお急ぎの方がいらっしゃいましたら「Contact us」より個別にお知らせください。可能な限り対応させて頂きます!

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

補足1
企業におけるリーンへの取組みにはひとつの切り口が見えました。
今年はベンチャーに向けたリーンの確立を急ぎますので、スタートアップの皆様はもう少々お待ちください!!!

補足2
昨年の最後の投稿は前後半もので、まだ後半が投稿されていません(笑)
この内容はリーン・ファシリテーター関連の投稿と連動してご紹介しますので、こちらももう少々お待ちくださいませ^^;