善は急げ⇔急がば回れ

善は急げ⇔急いては事をし損じる

君子危うきに近寄らず⇔虎穴に入らずんば虎児を得ず

蛙の子は蛙⇔鳶が鷹を生む

二度あることは三度ある⇔三度目の正直

立つ鳥跡を濁さず⇔旅の恥はかき捨て

一石二鳥⇔二兎を追う者は一兎をも得ず

三人寄れば文殊の知恵⇔船頭多くして船山に上る

 

さて、これらは言い回しや意味が相反することわざです。

みなさんは、それぞれどちらのことわざを信じますか?

 

このように、時としてアドバイスには「善し」とすることに真逆のことが存在する事例が数多く存在します。スタートアップの間でも、有名な “Done is better than perfect” や”Stay hungry, stay foolish” など、著名人の多くの名言があるわけですが、こうした言葉の多くは、真逆のアドバイスが存在したりします。みなさんも周りのひとから相反するアドバイスを受けたり、イベントで登壇者の話しが正反対なことを推奨しているのを聞いたことはありませんか?

 

実は「アドバイス」とは、それ自体には善し悪しはありません。

 

アドバイスが有効かどうかは、アドバイスされる人(や組織)にマッチしているかどうかだけなのです。

 

大きなチャンスを目の前にしても、いつもためらってしまう人には「虎穴に入らずんば虎児を得ず」が背中を押し、

いつも無謀すぎるチャレンジをしては手痛いダメージを負う人には「君子危うきに近寄らず」が慎重さを促す、と言えばイメージできますでしょうか。

 

つまり、アドバイスとは相手の状態が正確に理解できてから与える物であり、常に「後出しジャンケン」が正解なのです。

 

例えば私は、アドバイスする相手により、リーンスタートアップをどのように実践していくかについて、真逆のアドバイスをします。相手がベンチャー・スタートアップであれば「今日・今週実践できることを見つけて実行に移し、その結果から将来のビジネスモデルを継続的に設計→実験し続けること」をアドバイスしますが、大企業に向けては「ビジネスモデルの設計などは一切しなくても構わないので、投資回収を阻害しているすべての要因を取り除きましょう」と言っています。

 

理由は簡単。

 

ベンチャー・スタートアップは今から組織が形成されていくわけですから、現時点では組織にはまったく問題・課題が存在していません。ということは組織の問題が顕在化して成長性を阻害するまでは、事業を成立させることと企業として存続することに集中していくのが最もムダのない行動だと言えます。これに対し、大企業は既存事業からの収益・利益を最大化するために最適化された組織です。この最適化が進むと新規事業が生まれにくい部分最適化が進んでいる状態ですから、これを解消しない限り、必ずボトルネックを抱えながらの投資が継続することになるので、投資回収効率が著しく悪い状態で多くのリソースが投じられると言うことなのです。イノベーションだなんだと言う前に、組織の課題を明確にし、それと対峙することが先決なのです。

 

さて、今から3年前、この課題にチャレンジした企業があります。2012年に「爆速」のキーワードと共に経営体制を一新したYahoo!です。当時、創業以来16期連続の増収増益を継続する中でここまで大胆な改革を実施する企業の存在は、コンサルタントの立場から見ると実に「希有」な存在と言わざるを得ません。企業が大きな改革に重い腰を上げるのは、多くのケースで「減収減益」が長期にわたって継続した後でしかなく、問題を常に先送りするのが一般的だからです。しかし、Yahoo!は減収減益という「取りうる選択肢が限られてくる」状態を招く前に改革に着手することができた、実に貴重な事例なのです。

 

大企業の新規事業開発担当者向けイベント “Lean Startup for Enterprise Meetup” 次回の開催では、2012年当時から継続して業務改善を支えたご担当者に登壇頂き、講演並びにパネルディスカッションを行います。組織内で本当は何が起きていたのか、大きな課題はどのように誰が乗り越えたのか、実は乗り越えられなかった課題はないのか、改革によって新たに生じた課題はないのか・・・。”Lean Startup for Enterprise Meetup”ならではの「プロセス重視」の観点から貴重な情報をお届けします。奮ってご参加下さい。

 

ちなみに・・・

ひとは「自分にとって適切なアドバイス」ではなく「自分にとって都合の良いアドバイス」を信じます。

これを防ぐには、自分の課題を周囲に対して明らかにし、後出しジャンケン方式でアドバイスを受ける以外に有効な解決策は決してありませんのでご注意を・・・