先週はデビュー・サポートのイントロダクションとして、起業にもスイミング・スクールのような進級項目が必要で、特に起業初心者には、本格的な泳ぎの前に、水に慣れるための基礎的な練習が必要だと言う話しをしました。「けのび」という、壁を蹴って水の中でカラダを一直線に伸ばして進む泳ぎは、もちろん競技スイミングで大会を目指すひとなら誰でもできます。けのびが出来るか出来ないかは、そもそもスイミングの世界で戦っていけるかどうかを見極める最初の一歩です。
これと同様に、起業の世界でも、起業して成功できているひとにとっては当たり前すぎるけど、起業できないひとにはとてもハードルが高いということが数多く存在します。
その代表格が、今回紹介する「自己紹介」です。
自己紹介ほど、ベンチャーを目指すひとにとって大切なスキルはありません。
なにしろ、なもないベンチャーとは、世間では「怪しすぎる存在」だからです!
これから商談というタイミングで正しく自己紹介できなかった場合には、どんな天才的な才能を持ったひとにも決してチャンスは訪れません。
ビジネスモデルよりも、会社名よりも、名刺のデザインよりも、それこそあなたの顔つきよりも、自己紹介がちゃんとできるかどうかによって、起業で成功できるかどうかが左右されるのです。
実は、起業できないひとの多くは、この自己紹介ですでにつまずいているひとがほとんどです。
これから、起業家にとって自己紹介がいかに重要かをイヤというほど解説します。
さて、会社員のみなさんは1年間を通じて何回ぐらい、まったくの他人に自己紹介をしますか?
取引先のクライアントを訪問して名刺交換をする。
業界の勉強会へ出席して、他社の方との情報交換を兼ねて名刺交換をする。
一般的なサラリーマン生活の中でも、これぐらいの「自己紹介」をする機会はありますよね。
しかし、実際にはこうした「名刺交換」という作業は、正確に言うと「自社」紹介をしているのであって「自己」紹介はしていません。
相手の興味はあなたが「どこの会社に所属しているか」に集約され、「どんな人間か」についてはほとんど関心がありません。
有名企業に勤務していれば、名刺に記載された社名と部門名、役職が伝われば名刺交換の役割は9割完了。
サラリーマンにおける名刺交換は「自己紹介」とはほど遠いものです。
一方、存在そのものが「うさんくさい」起業家・ベンチャーにとって、自己紹介はサラリーマンにおける名刺交換以上の意味を持ちます。
例えば私は年間に30回ほどセミナーや講演を行いますが、話しの冒頭で自己紹介を成功させなければ、残りの2時間、聴いて頂く方との良好なコミュニケーションは決して生まれません。
社会は
「あなたがどんなビジネスを営んでいるか」よりも先に
「あなたは信用に値するのか」
を値踏みしてから、残りの時間を過ごし始めるのです。
みなさんの自己紹介のスキルが低い理由は3つあります。
- 自己紹介の目的を誤解している
- 圧倒的に場数が足りない
- そもそも練習しない
これだけです。
1つめ
起業できないひとの多くは、自己紹介の目的を「自己アピール」だと思っていますが、これが完全に間違ってます。
自己紹介とは、相手との「関係構築」です。
相手がどんなことに関心を示すのかを探りながら、自分の「引き出し」の中から必要な情報を取り出して手渡す。
これを、名刺交換のような「接触」がある場合も、セミナー・講演のような「非接触」の場合も、また、1分で行う場合も5分与えられている場合も、それぞれの最低ラインをクリアすると、ようやくアピールの機会が与えられるのです。
プレゼンの冒頭で淀みなく自己紹介ができたからといって安心してはいけません。
プレゼン後の質疑応答を含め、あなたがステージを降りるまで「関係の構築」は継続しています。
最後まで気を抜かず、相手の知りたいことを理解しようと思う姿勢が、自己紹介をブラッシュアップするのです。
2つめは「場数」ですが、これは特に説明の必要はないと思います。
というか、自己紹介なんてその目的を正しく理解して起業してしまえば、必然的に毎日のように行うようになります。
今日は上手にできなかったとしても、明日上手くなれば大丈夫。場数が成長を裏切ることはありません。
そのためにはまず最初は「練習」をがんばることです。
自己紹介の練習なんてやったことない、と思うかもしれませんが、就職活動のときに自己分析やって自己PRを書きましたよね。
起業すると言うのは、あれが毎日続くようなものです。
社会人になってまで自己分析やりたくない、自己PRやりたくないというひとは、ハッキリ言って起業は向いていないと思います。
とにかく次の5項目について、まずは3分で説明できるよう、練習してみて下さい。
- なぜ起業したいのですか
- なぜそのテーマに取り組むのですが
- なぜそれはあなたでなくてはダメなのですか
- なぜそれを就職ではなく起業という形で取り組みたいのですか
- 自分なら成功できると思う根拠はなんですか
前回のブログで
「そんなことやって起業できるの?」と思えるぐらいにバカバカしいトレーニングを、ほぼ毎週お送りするとお伝えしましたが、その最初の一歩が自己紹介なのです。
ただし、どんな場面、どんな時間制限でも「いつでも完璧な自己紹介ができるひと」が存在しているわけではありません。
ひとはそれぞれ得意不得意がありますから、例えば言葉で説明する自己紹介が苦手だと思ったら、どこに行くときも「デモ」や「プロトタイプ」を持参するとかして、「なにか」や「誰か」に自分を代弁させてしまうと言うのもぜんぜんアリです。目的を叶えるために自分の得意なやり方で置き換える、という選択は、工夫次第でどうにでもなります。
また、一度失敗したからといって落ち込む必要もありません。
その時はたまたま相手の望むことには応えられなかったとしても、あなたが自分と相手を理解しようと努力し、言語化をがんばったという経験は消えません。
起業は「完璧な人が成功をつかみ取る」のではなく、「成功するまで努力するひとのところにチャンスが巡ってくる」だけです。
自己紹介を「バカバカしい」と思うか。それとも「そんなことでもいいのか」と思うか。
そこに起業家としての資質が問われているようにも思います。
次回も自己紹介をもう少し掘り下げてお話しします!