昨日、グルーポンがいかにしてPivotしたのかを教えてくれる興味深い記事(Groupon: the billion-dollar that company turned down Google)が掲載されましたので、要約でご紹介します。

ご存知のように、グルーポンは2006年の創立から、世界で最も速いスピードで成長した企業だと言われています。

しかし、創業者アンドリュー・メイソンも最初から成功を手にしたわけではありませんでした。

彼の最初のサイト「The Point」はグルーポンのヒットがなければ瀕死寸前だったそうです。。。

以下、前述のサイトの要約でご紹介します。


■起業

  • アンドリュー・メイソンが起業したのはシカゴ大学卒業間際の2006年。
  • Eric Lefkofskyより100万ドルの資金融資を受けて起業。
  • 後にグルーポンの前身となる”The Point“というサイトを構築した。

■最初の失敗

  • “The Point”のコンセプトは、オンライン募金の問題を解決するというミッションだった。
  • オンライン募金が抱える問題とは、掲載されている活動に募金しても本当に有益に使われるのか分からないということや、募金者が少ない活動にはなかなか募金してくれないということだった。
  • 問題の解決方法は、各活動に「ティッピング・ポイント」を設定し、募金が一定の額に達しない限りは募金者にはチャージされないというサイトを構築した。
  • しかし、このプラットフォームはどんな人でも利用することができたため、多国籍企業へのボイコット活動や、雑誌の購読料割引購入などにも使われてしまい、ターゲットがフォーカスされることがなかった。

■さらなる深みへ・・・

  • なんとかしてトラフィックを稼ぐために、GoogleのAdWordsを購入した。
  • トラフィック増を重視したため「マリファナ合法栽培」などというキーワードまで手を出した。
  • その結果、増えたのは「バッド・トラフィック」というべきもので、ついにはサイトのハッキングまでされてしまう・・・
  • こうした失敗の末に、パートナーを解雇することに。。。

■唯一の希望

  • そんななかでも唯一機能していたものがあった。「共同購入」だ。
  • “The Point”にて唯一成功したのは、顧客グループに「バイイング・パワー」をもたらしたことだった。
  • ここに光明を見出したアンドリュー・メイソンは、毎日様々な「ディール」をブログに掲載を始める。
  • 「グルーポン・ドットコムをゲットしよう」と名づけてここへ集中し始める。

■そしてWin-Winの関係を

  • バイイング・パワーが機能すると判断するやいなや、「ディール」を獲得するためにアンドリュー・メイソンのチームは毎日100件もの電話を事業主に掛け続けた。
  • ティッピング・ポイントを超えるまでは1セントたりとも費用は発生しないという触れ込みによって、事業主を誘い込んだ。
  • そして最初のディール成立は2008年10月、グルーポンが入居するビルの1階のピザ屋による「1枚の値段で2枚のピザ」というディールだった。
  • このディールにより、ピザ屋は新規顧客を手に入れることができた。
  • その後もグルーポンにディールを提供した事業主は、広告費を支払うことなく新規顧客を獲得し、Win-Winの関係が構築された。
  • このWin-Win関係は、事業主、購入者、グルーポンの3者がともに享受するものだった。

■急速な拡大

  • シカゴでビジネスモデルを見出したグルーポンは、その後6ヶ月でボストン、ニューヨーク、ワシントンDCに拡大する。
  • 必要なのはメール登録者を拡大することだった。メール登録者の増加は、そのまま購入者増加につながった。
  • メールに登録すれば「ディール」を見ることはできるが、サインアップしないと購入はできないという仕組みにした。
  • これにより、シカゴのたった5000人のメーリングリストからスタートしたグルーポンが、6ヶ月で主要都市に拡大することとなった。

■購買層の把握

  • 多数のメーリングリスト登録者から得たデモグラフィック情報は、広告業者としての価値を生み出した。
  • 以下、グルーポンの主要なメーリングリスト登録者層(各属性の最大購入者層のみ:参考情報
  • 年齢層:18-34才(68%)
  • 学歴:大卒(50%)
  • 結婚歴:独身(49%)
  • 性別:女性(77%)
  • 雇用:フルタイム(75%)
  • 収入:$10万以上(29%)

■グルーポンの偉業

  • 北米だけで30,150,000以上のメーリングリスト登録者がいる
  • 全米160都市に拡大
  • 世界35カ国にも
  • 北米だけで31,150,000枚以上のクーポンが購入された
  • グルーポンのディスカウントによって13億2500万ドルが節約された!
  • 約1000万人がサインアップしている

■Googleによる買収オファー

  • 2010年12月に、Googleより60億ドルで買収オファーを受ける!!
  • が、返事は「ノーサンキュー!!」
  • 理由は金額ではなくアンチラストの問題とのこと

■成功のポイント

  • いつでも失敗から学ぶべきことがある。失敗は、自分では見つけられないことに導いてくれる。
  • 顧客なくして企業なし。「どうしたらもっと顧客を得ることができるか?」という問題を解決出来れば、その他の問題は簡単に解決できる。
  • 素晴らしい顧客体験に集中すれば、製品と売上げは飛躍的に改善する。
  • (事業アイディアのなかで)何が機能していて何が機能していないのかに注意する。事業を俯瞰し、顧客に耳を傾け、機能するものに集中して、機能しないものを切り捨てる。
  • 素早い行動が壁を打ち破る。バイイング・パワーを見出してからのスピードは驚異的。
  • Win-Winの関係を作ること。
  • 方針転換(Pivot)を恐れない。成功しているほとんどの企業は元々のミッションやビジネスアイディアを変えて成功している。うまくいっていないオリジナルプランへのこだわりは、より大きな機会を失う。

短い記事ではありますが、グルーポンほどの成功事例でも危機が迫っていたことを実感することができます。

そしてなにより、ある特定の機能「バイイング・パワー」に集中し、しかも最初はシカゴという場所も絞り込むことで、グルーポンのPivotは大成功しました。

トラフィックにこだわり、より多くの資金をGoogleキーワードに投資していたら、今日の成功はなかったかもしれません。

ところで、みなさんはグルーポン本家サイトのFAQをご覧になったことはありますでしょうか?

グルーポンといえば、アンドリュー・メイソンが様々なメディアでブランディングに貢献をしていますが、このFAQは様々な意味でとても参考になります。

例えば、

What happens if the Groupon doesn’t reach its required minimum number of purchasers?

「もしクーポンが設定人数まで届かなかった場合はどうなりますか?」という問いに対して、

If not enough people sign up, then the deal is canceled, and you won’t be charged. Better luck next time! So if you really want the Groupon, be sure to either beg or threaten your friends.

「もし必要な人数に達しなかった場合は、ディールはキャンセルになります。その場合はチャージされることはありませんが、次の機会を楽しみに! どうしてもクーポンを手に入れたかったら、友達に頼み込むか、もしくは脅すなどしてみましょう」

なんていう回答があり、ユーザ体験の楽しさをアピールしています。

また、

Can I return a Groupon?

「クーポンを返品はできますか?」

という問いに対するブログのリンクで、こんな風にも書いています。

For me, one of the most exciting parts of starting a business is the opportunity to correct all the things that bug me about some of the companies I buy stuff from.

「私にとって、ビジネスを始めることの最もエキサイティングなことの1つは、私が買い物するときに被ってきたバグを修正する機会だということです」

これは起業家としてとてもグッとくる文章だと思いました。

バイイング・パワーに集中したことも確かに成功へつながった要因だと思いますが、こうしたコミュニケーションによるユーザとの距離を縮めかたも大いに参考になります。

このブログではユーザからのフィードバックを常に歓迎する姿勢を記載していて、こうしたFAQからも多くの仮説と検証が行われたのではないかと思います。

しかし、”グルーポンの約束”と題されたこのブログに記載されている内容は「おせち事件」の後に読むと少々痛い感じなので、興味あればぜひ御覧ください(笑)