みなさんは “LeanUX”という言葉をご存知でしょうか。
日本でも”Open Network Lab“にてLean UXを題材としたワークショップが開催され、少しずつですが言葉の認知も進んでいるようです。
10/18に、Open Network Labのセミナー出席者を中心としたユーザグループ”Shibuya UX“が開催した「振り返りイベント」にて、私もLTでリーンスタートアップを紹介させて頂きましたので、そこでの交流やLeanUXの概要についてご紹介したいと思います。
※その時のスライドはこちら(slideshare)
※ShibuyaUXを主催されている坂田さんにお声がけいただきました。ありがとうございました!
私がLeanUXという言葉を初めて聞いたのは、今年5月に開催されたリーンスタートアップのカンファレンス “Startup Lessons Learned Conference“にて、UXデザイナーであるJanice Fraserの講演を見た時です。
この当時は、Janiceさんの経歴と発表内容から、「デザイナーさんがリーンスタートアップを勉強した成果の発表か」ぐらいにしか記憶がなかったのですが、今回イベントへ参加させていただいたのをきっかけに、再度、当時のビデオ(justin.tv)を見なおしてみました。
ものすごく簡単にLeanUX(という言葉の)誕生の経緯をご紹介すると、Janiceさんが知り合いからリーンスタートアップの存在を教えてもらって勉強してみたら、UCD(User-centered design:ユーザ中心設計)の考え方と顧客開発モデルの「顧客発見」ってほとんど同じ考え方なんだ!と気づいたところから、UXデザインをUCDの設計思想に基づいてアジャイルに進めていく手法を”LeanUX”と命名したということです。
※間違ってたらご指摘ください
ということで改めてリーンスタートアップと”LeanUX”の定義を比較してみると・・・
Lean Startup=顧客開発モデル+アジャイル開発
LeanUX=UCD+アジャイル
ん?
顧客開発モデル(顧客発見)とUCDが同じ発想ということは、つまりこの2つはほぼ同じなんですね!
どおりで出席してみなさんの発表を聞いていても違和感ないはずです。
結局目指しているところは同じ(UXの実現)であり、アプローチが違っても”Lean”に進めていくということがITサービス開発の大きな流れなんだ、と感じたのです。
ですが、そんなことを思いながらも1つだけ決定的な違いの存在にも気づきました。
それはイベント出席者の(立場の)違いです。
リーンスタートアップのイベントへの出席者はスタートアップのプログラマやプランナーの方が多いのに対して、”LeanUX”のイベントでは、デザイナーさんや企業内のUX担当者が圧倒的に多く、プログラマの出席は比率としてまだ少数です。
※gifteeの太田さんがいらしてました!
で、目指しているものや考え方は同じなのに、どうしてこのようなコミュニティの違いが生まれるのかをちょっと考えてみました。
イベントではLTの後にグループに別れてディスカッションを行ったのですが、ここでご一緒させていただいた方のお話しで、なんとなく違いのヒントがありました。
ディスカッションさせて頂いた方たちは、開発チームの一部としてUX設計を担当されているとのことなのですが、サービスのコンセプト自体は別に存在する企画チームが行うということです。
つまり、UXを担当する方は製品・サービスのコンセプト段階には関わらず、コンセプトが固まった後の工程を担当されていらっしゃいます。
リーンスタートアップのイベントにお越しいただく方の多くはまさにこのコンセプト段階の方が多いのに対して、”LeanUX”ではコンセプト設計が終わった後のフェーズからの担当者さんがいらっしゃるのです。
リーンスタートアップで仮説の検証を繰り返しながら”Pivot”していく場合、ケースによってはこのコンセプトもひっくり返しながらビジネスモデルを模索していくわけですが、ご一緒させて頂いた方の立場からすると、なかなかそのような機会はないのかもしれない、と思ったのです。
つまり、2つのイベントの特色の違いは、新規事業開発のフェーズの違いなのかな?という感じです。
もちろんUX担当者と企画担当者がフラットな関係にあればこのような違いは生じないと思いますが、イベントによる出席者の違いとしてはなんだか妙に納得してしまいました。
ですが、日頃からUCDの理念を実践していらっしゃるUXデザイナさんは、非常にリーンスタートアップに対する理解が深いことも印象的でした。
この辺りは、ついソリューションに固執する傾向がある技術者との違いだったりするかもしれません。
いずれにしても、リーンスタートアップ・イベントへの出席者と、”LeanUX”イベントへの出席者間では、多くの知識で共有すべきことが多いと思います。
ターゲットするユーザのペルソナを描き出す手法などは、プログラマにとっても実に参考になります。
今回のイベントで私自身もつながりが生まれましたので、これからは積極的に交流を進めていきたいと思います。
ちなみに、ディスカッションの中で「UXという言葉の定義はけっこう曖昧」というご意見がありまして、ここも私なりにUXの定義を考えてみました。
当然ながらデザインが素晴らしいとかの問題ではなく、重要なのはユーザがストレスなく課題解決できるようにするための設計思想だと思っています。
デザインの観点から言えば、これが正解という共通項は存在せず、製品やサービスが「ターゲットするユーザ」に対してベストなインターフェースが提供できるか?だと思います。
典型的な事例としては「らくらくフォン」はターゲットユーザである高齢者にとってはUXなデザインだが、ターゲットされないハイリテラシーユーザには、かえって悪いナビゲーションになってしまうことでしょうか。
やはりここでも「ターゲットするユーザを絞り込む(ペルソナ)」は大切だと実感しました。
イベント前半の振り返り発表の際に、VOYAGE Groupの榎本さんが、Janiceさんの講演のまとめとして以下の情報を共有されました。
「新規事業開発のスタート段階から仮説検証を進めることは、ローンチ後に訪れる様々なリスク(仮説在庫と表現されてました)を事前に軽減することができる」
この表現は素晴らしいですね。
スタートアップには多くのリスクがつきものですが、早期にリスクを解消していくことによってローンチ後のリスクを消化していくというのは実に合理的な表現です。
私もさっそく使わせて頂きます!笑
次回のShibuyaUXイベントは11/7(月)とのことですので、また詳細が決まりましたらお知らせします。
【お知らせ】
デジタルガレージさんのカンファレンス”The New Context Conference 2011“にて、パネリストとして参加させていただくことになりました。
私以外は超豪華なメンバが終日貴重なお話しをされると思いますので、ご都合がよろしければぜひご参加ください。
会場でお会いできるのを楽しみにしております!
【告知】
9月から開始した朝会ですが、11月からは会場を変更します!
“share0“の中川さんが、渋谷に新しいワーキングスペース”Lightening Spot“を11/01にオープンするのですが、私も利用させていただくことになりました!
で、朝会の会場もこちらに変更して開催します!
朝食がなくなりますが、向いのマクドナルド(24h)で調達してくださいw
場所は、いま開催しているPublic Houseの目の前、渋谷三郵便局の上になります。
噂によると、”Lightening Spot”には数々の有名人が半常駐することになるようですので、渋谷でノマドの際にはぜひ覗いてみてください!