今朝、Startup Datingに「リーンスタートアップが機能しないワケ」というタイトル記事の日本語版がアップされたのはご覧になりましたでしょうか?

 

日本語訳はこちら

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リーンスタートアップという手法は、適用に適していないサービスが存在するという主旨で記載されたこのブログでは、「ネットワーク効果型スタートアップ」(ユーザ数やデータ数が増えるほど、サービスの価値が高まるサービスを行うスタートアップ)では、ユーザが得られる価値は、ユーザ数が「クリティカルマス」を超えることで増幅するため、「実用的なプロダクトを作る前に、ユーザを獲得することが先決」※1と言っています。

※1つまり顧客開発モデルの逆を実施すること。ショーン・エリスの引用として

 

このブログを読まれて、リーンスタートアップを実践されているスタートアップの誤解を招かないよう、このブログを少し補足したいと思います。

 

 

この記事では、「ネットワーク効果型スタートアップ」では、ユーザ数が「クリティカルマス」を超えた段階で、ユーザが得られる価値は何倍にもなると言っていますが、では、「ネットワーク効果型スタートアップ」を目指すアントレプレナーにとって、必要最低限、獲得すべき「エバンジェリスト・ユーザ数(イノベーター/アーリーアダプター)」は何ユーザなのでしょうか?

 

 

答えは、

 

「2人」

 

です。

 

 

答えは単純です。

 

スタートアップが提供する機能において、たった2者間でのコネクションでも効果を実感できないサービスは、ユーザ数がたとえ100万人を超えたとしてもユーザ価値は決して増幅したりしないからです。

 

このブログで「ユーザを獲得してから実用的なプロダクトを作成した」という成功事例としてPaypalが紹介されていますが、(本ブログを読まれている読者ならご存知のように)Paypalがサービスを開始したのは「PDAとPDAの間で送金できる」という非常にニッチなセグメントのユーザに対するサービスからです。

 

Paypalがサービスを開始した当時、PDAを保有するユーザは、決済手段こそあれど、ユーザ間の送金手段はありませんでした。

では、PDAを所有するユーザ間でもし送金手段が提供されたとしたら、そのサービスに対して価値を見出すシーンにおいて必要なユーザ数は何人でしょうか?

 

 

もちろん「2人」です。

 

 

その他にもMySpace、YouTube、Facebookなど、本ブログのケーススタディをご覧のみなさんには、”Pivot”して成功したスタートアップ事例としておなじみの名前が並びます。

 

こうしたすべてのスタートアップについても、それぞれ最初にユーザがそのサービス価値を実感するのは、すべて2者間でサービスが成立した時点で最初の“Wow!!”が得られるのはお分かりでしょうか?

 

MySpace/Facebook(ウェブサイト、メール、ブログに変わるコミュニケーション手段として、これらの手段に不満を持つ2人のユーザで成立)

YouTube(動画に特化したクローズドファイル共有サイトであったとしても、動画の共有に他のサービスで満足できなかった2人のユーザで成立)

 

このブログ記事では、こうしたスタートアップたちが成功したのは、多額の費用を先に投じたことによってユーザ価値が増幅したから成功した、としていますが、これらのスタートアップが多額の費用を投じてユーザを獲得し、「ネットワーク効果」を得ようとしたフェーズは、リーンスタートアップ(顧客開発モデル)では「顧客開拓」という3つめのフェーズの段階を指しています。

 

つまり、この記事を書いたスタートアップが着目しているのは「サービスのローンチ後に『スケール』する手段として、リーンスタートアップ(顧客開発モデル)の「顧客発見」「顧客実証」プロセスをしていてはダメ」と言っていて、それはまさしく「その通り!」で、なんら間違いはありません。「顧客開拓」以降のプロセスは、スケールするための資金を調達してイグジット計画を実践に移すためのプロセスなのですから。

こうしたスタートアップは、まずイノベーター、アーリーアダプターをニッチなサービスで獲得し、その後にキャズム超えを果たすための“Pivot”を実践したのです!

 

そもそも「ネットワーク効果型スタートアップ」とは、現在のようにソーシャルが普通に存在する時代に生まれたカテゴリーとしては正しいですが、少なくともニッチなターゲットユーザを満足させられないサービスが「ネットワーク効果型スタートアップ」に進化することなどあり得ません。スタートアップが最初から「ネットワーク効果型スタートアップ」を目指すこと自体が、テクノロジー・ライフサイクルと矛盾しているのです。

 

この“Pivot”の例で言えばは、それぞれ、かなり絞り込んだセグメントのユーザに対して提供していたサービスを、複数セグメントやマス・マーケットにフィットするよう「バリュー・プロポジション」を“Pivot”し、いわゆる「ホールプロダクト化」に成功したということです。

 

リーンスタートアップというプロセスに対する誤解が生じているということは、シリコンバレー以外の地域においてもリーンスタートアップの認知が拡大していることを証明しているのかもしれません。

 

リーンスタートアップや顧客開発モデルに対する誤解は、またどこかでスタートアップの死を誘発する可能性があります。

今日はそういった意味でも、より正確な情報を、より多く、より迅速に発信していかなければ行けない!と実感した記事でもありました。

 

最後にここだけ最大限に強調します

リーンスタートアップはメソドロジーの優位性によって、シリコンバレーの多くのスタートアップに採用されたわけではありません。

「実用性がなく、ユーザが何の価値も感じないプロダクトをどれだけ構築しても、スタートアップは決して成功しない!」

という『事実』を、多くのスタートアップが実感しているからなのです。

 

この違い、ぜひご理解頂ければと思います。

 

7/25のMeetupでもこの辺はフォローしますので、ご興味ある方はぜひご参加ください!