様々な方からのビジネスモデル・プレゼンテーションを聞いていると、

「そこのところもう少し詳しく聞きたいですっ!」

と前のめりになることよりも

「ん?なんでそれが問題なの?」とか

「『ターゲット層に価値ある情報を届ける』って言ってるけど、ターゲット層って誰?価値ある情報ってなに?」

という疑問が頻繁に頭をよぎります。

 

今年は数多くのスタートアップや企業の新規事業開発担当チームと共に、リーンスタートアップの実践について深掘りをしてきました。

リーンスタートアップを実践する目的はチームにより様々ですが、共通して課題になるのはやはりリーンスタートアップの最初の一歩はどう踏み出せばいいのか?ということです。フィードバック・ループの最初のひと転がりをどのように始めていくべきなのかが最大の懸念でした。

 

リーン・スタートアップ」の書籍を読んでも、何から始めればいいのかは明確に記載されていません。

しかし、リーンスタートアップのベースとなる「アントレプレナーの教科書」の顧客開発モデルには、そのヒントが示されています。

そう、まずは顧客開発モデルの最初のステップ「顧客発見」を行なうのです。

 

顧客発見を開始すると、ビジネスモデルとチームに足りないものが数々と見えてきます。そのひとつひとつを補いながら、顧客発見のゴール設定を明確にしていくのです。

 

顧客発見とは、ターゲットするユーザの課題に関する仮説と、その課題を解決するソリューションの仮説を検証することを目的にしており、このプロセスのゴールは「存在する課題」と、「適切なソリューション」が一致している状態、すなわち“Problem/Solution Fit”を目指します。つまり、すべてのスタートアップが最初に目指すべきマイルストンは、”Problem/Solution Fit”の状態だと言えるのです。

 

ファウンダーや新規事業開発担当者の多くは、アイディアを思いついた時点で”Problem/Solution Fit”は完了していると思っています。しかし、ほとんどのサービスは「存在しない課題(ニーズがない)」に対して製品・サービスを作ってしまったり、ソリューションが十分に課題を解決しないなどの理由によって、”Problem/Solution Fit”が完了していない状態のままで消えていきます。実は”Problem/Solution Fit”こそが、多くのスタートアップにとっての最初に訪れる超えられないキャズムなのです。

 

とは言っても、今度は顧客発見の開始から”Problem/Solution Fit”までの間に何をするべきなのか問題になります。「アントレプレナーの教科書」に記載されているプロセスだとBtoBのモデルに特化して記載されているため、BtoCのモデルではもうひとつどう進めていけばいいのか分からなかったり、課題仮説の記述に長い時間がかかって、かえって時間を浪費するというケースを数多く見てきました。さらに”Problem/Solution Fit”が完了したと言えるのはどのような条件が揃った時なのかも判断に迷います。どうやら問題は”Problem/Solution Fit”までにするべきことと、完了条件を明確にすることなのではないかと思うのです。

 

■”Problem/Solution Fit”の難しさ

  • 何について仮説を立てるべきか
  • どのような状態になったら検証できたと言えるのか

 

そこで、この2つを最も高速に実施するためには、逆に”Problem/Solution Fit”前に考える必要がないことを、徹底的に放置するという手段を考えました。トヨタ生産方式の基本的な考え方です。

 

Business Model CanvasやLean Canvas、そしてValidation Boardなどを参考にしつつ、それぞれのシートを実践してみた結果、”Problem/Solution Fit”までに必要ない項目を徹底的に取り除いてムダな時間を削減すると共に、素早く検証を行なうために記載の深掘りが必要な項目について、どうにかひとつの答えにたどり着きました。

 

それが“Lean Diagram”です。

 

LeanDiagram_sample

 

 

 

 

 

 

 

 

Business Model CanvasやLean Canvasが、ビジネスモデル全体を1枚のシートに書きだすのを目的にしているのに対して、”Lean Diagram”では、スタートアップが最初に出会うべきアーリーアダプター像の特定に目的を絞り込んでいます。彼らの課題、代替手段、そしてセグメントや特性を探り出すことこそがリーンスタートアップを最速で進める大切な条件であり、本当のアーリーアダプターに出会うことこそが、一気にバイラルするソリューションを生み出す原動力になるからです。

 

そして、良質なフィードバックを提供してくれるアーリーアダプターは必ず現在の解決手段(代替手段)を持っています。”Problem/Solution Fit”の完了とは、あなたのソリューションが提供するバリューと、ユーザに対して要求するコストがこの代替手段を上回っていて、あなたのサービスに乗り換えることが保証できた状態のことを指しているのです。

 

“Lean Diagram”を利用するメリットは以下のようなものです。

  • “Problem/Solution Fit”を完了させることに集中しているので、ムダな項目に対する検討時間が生まれない
  • Diagramのどこからでも記述が始められるので、思考に詰まることがない
  • 代替手段や検索条件など、ターゲットするユーザの現在の行動を追求するため、アーリーアダプターに早期に出会える
  • バラバラに記載を進めても、Diagram上で各項目の不整合が一目で分かる

など、アイディアからスタートするにはとても適しています。

 

“Lean Diagram”はフリー・ダウンロード可能です。ぜひ多くの方に利用いただき、フィードバックを頂ければと思います。

ダウンロードサイトをオープンしましたので、ぜひダウンロードして利用頂ければ幸いです。

http://leandiagram.com/

 

Google Groupに”Lean Diagram Circle Japan”を作成しました。どなたでも参加頂けますので、ご利用頂いてフィードバックよろしくお願いします。

https://groups.google.com/forum/?hl=ja&fromgroups#!forum/lean-diagram-circle-japan

 

 

また、”Lean Diagram”のダウンロード開始を記念して、ワークショップを開催します。

12月、1月ともに平日の夜間になりますが、ぜひご参加頂ければと思います。

募集期間がとても少ないのですが、12月は26日(水)に予定しています。まだ年内の予定が空いている方がいらっしゃいましたらぜひご参加下さい。

12月開催ワークショップの詳細と申込はこちらからお願いします。

http://everevo.com/event/3117

 

 

また、Facebookにて”Lean Diagram”ページを作成しました。

「いいね!」して頂ければ、1月以降のスケジュールもご確認頂けますので、ぜひポチっとお願いします。

https://www.facebook.com/LeanDiagram

 

 

年の押し詰まったタイミングでの公開となりましたが、来年からのスタートダッシュに”Lean Diagram”が貢献できればとてもウレシイです。

 

 

【あとがき】

とりあえず今回のバージョンは課題解決型サービスに適しているフォーマットになっています。CGMやエンターテイメントサービスでも利用できますが、一部記載しづらい項目があるかと思います。本バージョンに引き続き、CGMバージョン、エンタメバージョン、ECバージョンなどを作成していきたいと思っておりますので、もしよろしかったら”Lean Diagram”のコミュニティにご参加下さい。ぜひ一緒に作って行きましょう!