リーン・スタートアップ導入のコンサルをお受けする際、一番最初にクライアントにお話するのは、「いますぐ『新規事業開発プロジェクト』を停止して下さい」とお願いすることです。

 

「新規事業開発プロジェクトを実施するからこそ、リーン・スタートアップのコンサルを依頼しているのだよ…」とのクライアントの戸惑いはいつものことですが、こうお願いする理由は実に単純です。新規事業を創造するということは「開発」でもなく「プロジェクト」でもないのです。

ちょっと説明しましょう。

 

新規事業を作る理由は、企業によっても、アントレプレナー個人によっても様々です。しかし理由がなんであれ、そしてそれが誰であれ、作ろうとしているのは新たなビジネスモデルやイノベーションであり、単なる新製品などではありません。となると、新規事業とは絶対に「開発」できるものではなく、ひたすら実験を通じて「発見」するものなのだということがわかります。

しかし、チームのミッションが新規事業の「開発」だと言われたその瞬間から、チームメンバーは全員がこれまでも馴染み深い「開発工程」を組み始め、発見のためのプロセスを組もうとしなくなります。開発と発見、単純な言葉の違いですが、その言葉が人やチームに及ぼす影響は計り知れません。大企業の社員さんが大企業病に陥って新規事業創出ができなくなるのは、まさにこのパラダイムに陥るからです。

 

もうひとつ、「プロジェクト」という言葉も恐ろしく人とチームの行動に影響を及ぼします。

 

もしあなたが今週月曜日にスタートした「新規事業開発プロジェクト」のリーダーだとしたら、今週金曜日は何をしますか?

 

そう、きっとキックオフパーティーですよね(笑)

そしてその席で新規事業にかける熱い思いをメンバーと語り合い、サービスがローンチするまでは共に頑張ろうと誓い合うのです。

 

そう、ローンチしたらもう一度美味しいお酒を飲もうと全員で誓い合って。。。

 

 

もうお気づきですよね。

新規事業創出をプロジェクト化したその瞬間から、リーダーを始めとするすべてのメンバーにとってのゴールはローンチが設定されます

新規事業の発見は、ローンチしたその日、その瞬間から本当のフィードバック・ループが始まるにも関わらずです。

 

こうした罠に陥るのを避けるには、単純なことですが「新規事業開発プロジェクト」という呼び方を止めることはとても大切なことなのです。

 

逆に、こうした呼び方を止めるだけで本当に各メンバーの意識とミッション定義が変わり、ローンチをゴールに設定しなくなることこそが、リーン・スタートアップが目指す新規事業におけるマネジメントやサイエンスの世界なのです。

 

サービスをローンチした瞬間にミッションを完了したと思ってしまうことは、ロケットの打ち上げが成功した瞬間にミッションが完了したと思うことと同様に愚かなことです。

サービスもロケットも、まさに打ち上げられたその瞬間からすべては始まります。

ロケットの打ち上げが成功してミッション・コンプリートになるとしたら、あなたは打ち上げ場の従業員になってしまいます。

 

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あなたの新規事業創出に対するミッションは、打ち上げ場の従業員ですか?

それとも宇宙から貴重な情報を持ち帰り、それを更に人類の発展に活かすことですか?

 

いますぐ「新規事業開発プロジェクト」を停止して、ローンチ時のパーティーを「2度目のキックオフ・パーティー」として下さい!